理科の中で最も安定して点数をとりにくいのが化学です。
他の理科の科目と比べて内容が多い化学は苦手な人も多く、頑張っているのになかなか成績に繋がらないことも多いでしょう。
だからこそ、得意になれば他の人と差がつけやすい科目でもあります。
化学の点数を上げるためには、正しい順番で勉強を進め、分野ごとの特徴を踏まえて勉強するのが近道。
ここからは高校化学の点数を効率的に上げる方法を具体的に解説します。
高校化学の点数を上げるための大前提
まずは高校化学の点数を上げるために、抑えておきたいことを解説します。
やみくもに頑張るのではなく、化学全体を把握してから最短で成績が上がる勉強方法をしていきましょう。
化学とは
自然界にあるあらゆる物質を構成するのが「原子」です。
この原子の種類(元素)は人が作り出したものを含めて109種類しかありません。
この元素を組み合わせて膨大な物質が作り出されます。
化学は身の回りの物質がどんな構造で成り立っているのか?どのような性質があるのか?を学ぶ分野です。
性質について知るためには物質同士を反応させたときの変化や反応も調べます。
さまざまな刺激を受けて状態が変化したり構造や性質が変わります。
物質同士の反応や結合によって別の物質が生まれることもあります。
また、反応が起こったときの量的関係(mol)について考えることも。
これらについて考えるのが化学の分野です。
ほぼ無限に作り出すことのできる物質ですが、大学受験に出てくる物質はすべて構造や性質がわかっているものだけです。
知らない物質が出てきたら、なぜこんな構造になるのか?など疑問に持つようにし、「化学の新研究」でその都度疑問を解消することができます。
地道な作業ですが、本質的な理解を大事にすることが点数UPの近道です。
勉強する分野の順番
化学は次の3つの分野にわけられます。
- 理論化学
- 有機化学
- 無機化学
勉強は必ず理論化学からです。
理論化学は、化学の基礎知識や計算方法が含まれる分野。
基礎と計算をバランスよく学べる理論化学で、次に学ぶ有機化学・無機化学の土台を作りましょう。
ただし理論化学は応用となると難易度もかなり上がるので、全てを完璧にしようとすると他の勉強に手が回らなくなる可能性もあります。
まずは理論化学の基礎を固めることを徹底し、基礎を抑えたら有機化学や無機化学に進んでいきましょう。
理論化学の応用は、化学全体をある程度理解できた後に手をつけるとよいです。
次に学ぶ有機化学は、覚える量が多いものの規則性もあり比較的覚えやすい分野です。
出題パターンも決まっているので、規則性を理解しながら暗記すれば安定して得点できるようになります。
無機化学も覚える量が多いですが、内容同士の規則性が少ないので少し大変な分野です。
暗記量が多く忘れやすいところなので、模試やテスト前などに定期的に繰り返すと定着しやすいですよ。
暗記部分は最小限に
暗記量の多い化学ですが、全て丸暗記で対応するのは不可能です。
無機化学の範囲は知識同士の関連性も少なく、単純にひたすら暗記することが多いです。
その中でも他の知識と関連付けて覚えられる部分と、単純暗記をしっかりと分けながらインプットを進めていきましょう。
何度も繰り返しながら暗記事項を定着させていきます。
一方有機化学は暗記内容に規則性があります。
化学反応式をいちいちすべて覚えていたらきりがありませんが、反応式の作り方を覚えることで覚えることを減らせます。
逆にイオン化傾向や主な物質の構造は、しっかり暗記しなければ問題を解けません。
暗記する部分は取捨選択しながら最小限に。
すべて丸暗記しようとすると、応用が利かず結局問題を解く力にならないので絶対に×です。
単位を常に意識すること
化学にはさまざまな単位が出てきます。
mol g m L Pa …
計算をしている間に、式の途中に現れる数字が何の単位なのかが分からなくなることがあります。
必ず計算式の中にも(mol)と単位をつけるようにしましょう。
また、単位は計算することも可能です。
例えばモル濃度を求める時には、物質量(mol)を溶媒の体積(L)で割る必要があります。
だからモル濃度の単位は [ mol / L ] なんです。
公式など覚えずとも、単位を見ればその値を求める計算式が分かります。
単位を制す者が化学・物理を制します。単位を常に意識しましょう。
理論化学の勉強方法
化学の基礎となる最も重要な分野です。
さまざまな物質に共通する考え方を学ぶため、どの学校でも最初に学習します。
理論化学が理解できていないと、続く有機化学・無機化学の内容を理解できなくなり、非常に勉強の効率が悪いです。
ただ重要ではありますが基礎的な部分でもあるため、すぐに点数につながりにくいケースも。
コツコツと積み上げる学習方法が必須になるので、あきらめずに基礎を固めましょう。
本質的な理解が必要
本質的な理解を深めることに重点をおきましょう。
理論化学では分野同士のつながりが強いため、理解することで対応できる問題が増えます。
- 原子はどのような構造か
- イオンはどのようにできているか
- 物質はどのような分類があるか
などの基本的なことを自分の言葉で説明できるでしょうか?
配位結合、ヘスの法則、溶解度、電気陰性度など、用語も多くなりますが、これらを日本語で解説できるでしょうか?
試験ではこれらの用語をダイレクトに説明させる問題も多く出ます。
物質量(mol)の理解があいまいな人もとても多いですよね。
理論化学の中には内容理解が難しいところも多いです。
しかし「わかったつもり」になって「なんとなくごまかしながら勉強を進める」と、必ず後で総崩れになります。
ここを耐え抜けば後の有機化学・無機化学の勉強がラクになります。
難しさにくじけず、ごまかさず徹底的に理解を深めていってください。
周期表の規則と配置を理解
周期表は何も見ずに書けるでしょうか?
周期表は物質の性質や特徴を考慮して並べられたもので、配置には意味があります。
原子、分子、元素、陽子、中性子、質量数、電子殻などの言葉を通して、周期表の理解を深めましょう。
また電子配置のルールを理解すれば、電気陰性度やイオン化傾向は理解できます。
原子構造からイオン化傾向などを説明できるまで理解しておくと、化学反応式を考えるとき非常にスムーズです。
ひとつひとつ丁寧に理解することで次の知識が頭に入りやすくなりますから、あきらめずに教科書や参考書を読み込みましょう。
また、化学の基本となる周期表は少なくとも20番までの元素は暗記しましょう。
さらに無機化学に出てくる元素は、周期表の位置と番号を必ず暗記してください。
これをすることで無機化学に入ったときに理解がしやすくなりますよ。
有機化学の勉強方法
有機化学は暗記も思考力も必要な分野です。
まずは知識が入っていないと思考や計算ができませんので、覚えるべきことはコツコツ覚えていきましょう。
有機化学で出てくる元素の数は限られますが、それらを組み合わせることで生まれる数万種類の化合物を扱うことになります。
それらの構造を考えるのが有機化学。
ひとつひとつを単体で覚えるのは到底無理なので、規則性やそれぞれの意味を考えながら効率的に覚えていきましょう。
出題パターンも決まっているので、習得してしまえば化学の中では安定した得点源になります。
自分の理解をごまかさず、丁寧に勉強できれば大きな武器になりますよ。
脂肪族を正しく理解する
入試で出題頻度が高いのが、有機化学の前半部分である脂肪族~芳香族化合物です。
この部分は規則性を覚えながら勉強することが非常に大切。
ひとつひとつの言葉の定義を読み込み、理解しながら覚えましょう。
丸暗記はNGです。
- 化合物の名前づけのルールである命名法
- 有機化合物の構造と性質
- 化学反応による構造変化
これらの規則性を考えながら覚えましょう。
最初は難しく感じるかもしれませんが、何度も勉強するうちに化合物同士の共通点が見えてくるはずです。
それがつかめたら一気に知識が定着しやすくなります。
「あ、そういうことだったんだ」と腑に落ちるまで繰り返すことが大切です。
ここでベースができれば、その後の芳香族や高分子化合物の勉強にも生かされますよ。
後半部分の高分子化合物における構造決定問題が苦手な人も多いです。
高分子の分野は覚える量は少ないですが、計算問題などが独特。
まずは基本問題をたくさん解いて、問題の傾向に慣れることが必要です。
油脂で差をつける!
難しいと感じる人が多い油脂は、人と差をつける狙いめの分野です。
苦手な人も多いですが、実際にはグリセリンにエステル化した高級脂肪酸がついているだけ。
化学反応はこれまでの脂肪族と変わらないので、すでに覚えた知識で対応できる部分が大きいです。
今まで通りひとつひとつの言葉の定義を丁寧に理解しながら、エステル化としっかり関連付けて理解しましょう。
無機化学の勉強方法
覚える知識の量が多く、知識同士の関連性も少ないですが、丸暗記だけは対応できません。
丸暗記でしか対応できない部分と、関連付けておぼれられる部分を分けて効率的に覚えましょう。
無機化学で勉強する内容は、ほとんど無機化学の勉強のときにしか出てきません。
普段の化学の勉強で無機化学の知識を確認する機会がないので、非常に忘れやすいです。
大学入試においても、無機化学の配点は少ない傾向があるので多くの時間を割く必要はありません。
そのため無機化学は早めに取り組まなくてOK。
定期的に確かめる程度にして、最後に集中的に暗記するのがおすすめです。
そして無機化学は暗記がものをいう分野ですが、インプットだけでなくアウトプットも忘れないでください。
覚えることが膨大にあるとインプットにばかり焦点を当ててしまって、アウトプットがおろそかになってしまうことがあります。
暗記のみに時間を割くのではなく、演習時間も確保しましょう。
丸暗記できる部分
無機化学の中でも合金の名前や炎色反応は、高校化学の範囲では説明がつかないものです。
こうした理由付けができないものに関しては、サッサと語呂合わせなどで工夫して覚えましょう。
少しでも覚えやすくするためには、資料集などを使うのもおすすめ。
無機化学では実験での様子が多く出てきます。
写真や図で実際の色などを見ながら覚えると、文字で追っているよりも記憶に定着しやすいですよ。
他の分野と関連付けて覚える
無機化学の中でも、理論化学など他の分野と関係が深い知識があります。
主に扱われる反応式は、酸・塩基の式と酸化還元反応式ですが、これは理論化学でも出てくる分野です。
理論化学と関連が深いものは、周期表を思い浮かべながら解きましょう。
ただ無機化学の重要な反応式は、弱酸(弱塩基)遊離反応式を使っていて、こちらはなじみがないです。
逆に言えば、この弱酸(弱塩基)遊離式を理解すれば無機化学の反応式を理解するのがラクになります。
弱酸(弱塩基)遊離式の構造を理解できれば、物質が変わっても同じ考えで解くことが可能。
このように、無機化学は英単語のように黙々と暗記する部分と、理解して解けるようにしていく部分を分けながら勉強していきましょう。
頻出問題は演習を繰り返す
ある程度パターン化した問題も多いので、頻出問題は演習を繰り返して反射的に解き方が浮かぶようにしましょう。
問題演習をこなせば、問題文の中でどの知識が必要かがわかり、知識を引き出すスピードも速くなります。
中和滴定と酸化還元滴定も入試では頻出です。
実験を通して反応の流れをつかんだら、何パターンも演習を重ねましょう。
ただ問題演習を何も考えないままひたすらこなしても、なかなか解く力は身に付きません。
おすすめは問題文の条件をまとめることです。
化学の問題では問題文中にキーワードや物質名、実験の条件などがちりばめられています。
それを抜き出して箇条書きにしておくと、ひたすら問題を解くよりも問題を統計的に理解するのが速くなります。
反応で変化しているもの・していないもの・液体のモル濃度・物質量など、メモする癖をつけましょう。
おすすめの参考書・問題集
理系大学受験とはありますが、化学のことを隅から隅まで丁寧に抑えている1冊です。
これさえあれば他に参考書は不要と言っても過言ではありません。
問題集を買うなら、セミナー化学がおすすめです。
共通試験〜中堅大学までをフォローできます。
ごまかさずあきらめずコツコツと
理科の中でも理解しにくい内容が多い上、暗記する知識も膨大な化学。
最初はとっつきにくいかもしれませんが、何度も理解を重ねていくとどこかで物質の傾向や共通点を見いだせるようになってきます。
そうなると今度はルールや法則に沿って考えられるので、解ける問題が増えていきますよ。
最初は勉強しても点数につながらないかもしれませんが、そのときに「わかったふり」に逃げない人だけが化学で安定して点数をとれるようになります。
コツコツと丁寧に理解を深めながら、着実に勉強を積み上げていってください。